編まない、というか「編むどころじゃない」という感じか。
なんの前触れもなく編み物をするようになって、自由になる時間の多くを編むことに費やし続けてきたけれど、ここ数日は何かを編むどころか編みたいと思う気持ちもわかなかった。まあ、それどころじゃなかったわけだが。
で、代わりに何をやっていたかというと……読書だった。おもしろくて性急に先へ先へと進みたい気持ちを抑えつつ、夢中で読んでいたのはこれ。

星を継ぐもの - ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿 訳|東京創元社
星を継ぐもの 月面で発見された、真紅の宇宙服をまとった死体。綿密な調査の結果、驚くべき事実が判明する。死体はどの月面基地の所属でもないだけでなく、この世界の住人でさえなかった。彼は5万年前に死亡していたのだ! いったい彼の正体は? 調査チームに招集されたハント博士は壮大なる謎に挑む。
父の本棚から拝借したもので、70年代に発行された版ゆえにバーコードもISBNも記載がない、ページの周囲がだいぶ茶色になった本。
SFの定番、という認識なのでおもしろくないはずはない。でも読みたい本リストのだいぶうしろの方にあって、今更ながら読んだわけだ。
まあおもしろいのなんのって。
たとえば劉慈欣の『三体』は物語としてのおもしろさがありつつも、歴代SFのいいとこ取りというか、ここでこうきて、次にこう、それから驚きの事実がここで明らかになって、と「いかにも」な話の運び方などがわかりやすくて(最近のSFってこういうパターンなのか?)妙に冷静に読めてしまった。
だから、やっぱりとんでもないムチャクチャな内容じゃないと楽しめないのかも、と少し思ったりもした。
が、それでも『星を継ぐもの』は夢中で読めた。ハードSFってこんなに楽しかったかなと思うくらいに。まあ、月の裏側で見つかった人間の死体が5万年前のもので、ガニメデで見つかったどえらい宇宙船は2,500万年前のもの、という概要だけで「何それ意味わかんね」と興味をぐいぐい引っ張られるわけだが。こうなるとハードだろうとなんだろうと関係ない。
おまけに読み終わったら、続編が『ガニメデの優しい巨人』だと知り、父の蔵書にあったよなとすぐに思い出した。が、今は借りられない。でも読みたいから買ってしまうかどうか、と迷った。
この迷いは翌日に解消した。読了後に別の本を読み始めたのだけれど、手術中に病室で待っている間に読むつもりがうっかり持っていくのを忘れてしまったので、Kindle版の『ガニメデの優しい巨人』を読むしかなかったのだ。なんにも読まずに3時間とか4時間は辛い。同行していた母と数時間もずっと喋っているわけにもいかないし(もちろん母は自分で読む本を持参)。

ガニメデの優しい巨人 - ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿 訳|東京創元社
ガニメデの優しい巨人 木星の衛星ガニメデで発見された2500万年前の異星の宇宙船。その正体をつきとめるべく総力をあげるハント博士とダンチェッカー教授たち木星探査隊に向かって、宇宙の一角から急速に接近してくる未確認物体があった。
そしたらこいつもまたおもしろくて……
手術が終わり特に問題もなかったので自分のマンションに帰ったあとは、簡単な夕食を食べながらKindle版の続きを読んだ。紙の本だと食べながら読むのは難しい、というかできないが、タブレットなら楽勝である。そういうわけでその日のうちに読了。
またもや続きが読みたくなるようなおもしろさで(まだ続編が何冊もある)、この勢いでぜんぶ読みたい、が、読みさしの本も読みたい。ちなみに読みさしはこれ。

重力への挑戦 - ハル・クレメント/井上勇 訳|東京創元社
重力への挑戦 液体メタンの海とアンモニアの氷に覆われ、高速自転で赤道部が膨らんだ巨大惑星メスクリン。赤道部で3G、極地で700Gのこの星は、ある緯度以上への人類の進入を許さない。地球人は南極で離陸不能となった無人調査ロケット回収のため、原住生命と取引きをした。
作者とタイトルに聞き覚えがある(古いSFはだいたい聞き覚えがあるような……)ので買った本だが、読み始めたらこれまたおもしろい。世界をボウルの内側のかたちに捉えている異星人が出てくるだけでもう夢中。球の外側でもなければ平面というのでもなく、半球の内側に世界があるという認識って、なぜそうなる。これだからSFはやめられない。
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