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手編みの服と根気

2024/05/133
 中細毛糸で着るものを編む、というのはなかなか大変だと実感している。
 毛糸が細いのだから、それなりの面積を編むためには当然、それなりの目数と段数を要する。今回の編み図は、ゴム編みが終わったところから袖ぐりの下まで104段編めという。それで32cm。セーターの身頃は68段で34cmだったというのに、まだまだ毛糸に馴染みが薄い身としては驚きしかない。

 着るものをこんな細い毛糸で編むもんじゃないな、と思うが、厚手のざっくりニットばかり着たいわけでもない。というか、むしろ着たいものはその対極にある。

 90年代に大学生だったのと、当時UKロックを中心に聴いていたので、自然と細身の服を好むようになった。市販されていた服であれば、タートルネックでゴム編みのニットが身体にぴったりなのでお気に入りだった。あと、Tシャツみたいな感じで1枚で着る細身のニット。
 おまけにわたしの叔母は70年代に若者だった世代で、良い状態で保存していた当時の服を譲り受けたらこれが絶妙だった。袖が細い。袖ぐりも細い。身幅もぴったりで、かがんでも身頃がほとんど垂れ下がらない。それでいて動きにくくない。

 ……そんな嗜好が未だに続いているので、長らく編み物に関心を持たなかった理由がよくわかる。だって細身のニットは細い毛糸じゃないと編めないから手編みなんて無理だろう、という無意識の思い込みがあったのではないかと。

 しかし昨年はじめて靴下を編んだら、細い毛糸であっても自分にも編めるのだと気がついた。ならば靴下を編むのと同様に、2.5mmの棒針で中細毛糸を使って服も編めるのでは?

 と思ったのが運の尽き。なのだろうか。
 太い毛糸だったがセーターも編めたので、それで「根気さえありゃなんとかなる」とわかってしまったのも手伝って、それで現在は中細毛糸でノースリーブを編んでいるわけである。
 で、これが完成したらもう間違いなく、つい先日入手した70年代の編み物本に載っているあれやこれやを迷ってどれかを編み始めるに違いない。
 だが、70年代といえばまだまだ編み機が普及していた時代なので、中細毛糸よりも細い毛糸が指定されていたり(レースかぎ針0号が推奨の毛糸とか……)、用具に「両板機」「片板機」といった編み機らしい単語も見える。
 なかなかに手ごわい、というか編み機なしで編めるのかこれ。用具に編み機とかぎ針の両方が載っているものもあり、編み方図を見てもどこをどちらで編むのかよくわからんな。

 更にじっと本を眺めてみると、載っているのは簡易編み図というか裁縫のパターンに似ている。
 目数ではなく長さだけしか記載されていない図や部分もあったりで、なるほど、今回もまた図を読み解くところからやんなきゃいけないわけか。つまりはいつも通りだ。
 そしておそらく、これは製図の知識がないと駄目な部分がありそうだ。割り出しを自分で考えないとできないところがあるような……わからん。


 ええと、最初はこれから編もうかな? 編み図を確認したところ、かぎ針3/0号って書いてあるし。3/0号ならあみぐるみでよく使うので細いとは感じない。
 まるでシャツみたいな襟で、こういうのも編めるのかと驚いた。それはわたしがもともとは編み物に馴染みがないせいか、それとも近年はこういうデザイン自体がニットの世界にないということなのか。