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トルコといえば

 このところ仕事で大いに腹が立つことが続いているため、トルコタイル風デザインのレース編みで気分転換している。「レース編み」といっても感覚的には「コットン糸(20番くらいのレース糸)で編むグラニースクエア」みたいな感じだ。
 ただ編むだけでは気分転換にならないので、すっかり編み慣れたアフガン編みのブランケットではなく、編み図の読解が必要なこちらを選んだ。仕事とまったく接点のないものを理解するために頭を動かすことで気分転換ができるのだ。読書(詩とか)でもそれは可能なのだが、いま読みたい詩集を読むと厭世的気分にまっしぐらになってその勢いで仕事を辞めかねないので今は避ける。

 トルコ風な代物を編んでいながら、肝心のトルコについての自分の知識はオスマン帝国と絨毯と、あとは政治とか歴史上の事件くらいで、まあ、乏しい。食べ物もよく知らない。ずいぶん前から歴史的・文化的におもしろいはずだとわかっているのだが、興味関心の対象が無駄に多いがために後回しになってしまっている。
 だがここにきてようやく、トルコ手芸のひとつであるメキッキオヤへの具体的な関心が高まってきた。

 トルコの手芸には「○○オヤ」という名前のものがいくつかあり、何年か前に「すてきにハンドメイド」でも紹介されていたイーネオヤは縫い針を使う手芸だ。今にして思えばニードルタティングレースのようなものだった気がするが、詳細はよく覚えていない。難しそうに感じたことだけは覚えている。難しそうというか、細かくて無理だな、と。
 それでおしまいになるはずが、レース編みに使う細いレース針を探しているとトルコ手芸に関するサイトに遭遇する率が多くなり、それでトゥーオヤはかぎ針を使うもの、タティングシャトルを使えばメキッキオヤ、ビーズを使えば道具がなんであってもボンジュクオヤ、くらいの知識がついた。

 レース編みは金票40番で編むのが精一杯だというのに、軽い気持ちで60番レース糸で編んだらえらく難儀したのに変に楽しくなってしまい、更に細い糸で編みたくなってきている。そんなところにトゥーオヤで使うかぎ針のサイズは0.6mmくらいとかいう話を知ったら、オヤについてあれこれ調べてしまうのは当然の流れだ。

 それでついでにメキッキオヤに関する情報も目につきやすくなった。
 こちらの技法については「タティングレースと同じ動作で、どちらの糸が絡まるかだけが違う」程度の認識だ。が、たまたまInstagramでメキッキオヤの動画を目にしたところ(実にいいタイミングでお勧めに表示されたことに背筋が凍るが)、なんとなく編みやすそうに思えた。
 既にタティングレースの「目を移す」という方法に慣れてはいる。それでも、メキッキオヤの「目を移さない」方法を試してみるとやりやすいうえに目が揃った。いや、一度しかやっていないので次もそうかは不明だが、このやりやすさは魅力的だ。

 じゃあもうメキッキオヤにシフトチェンジするか、と思った。もともとタティングレース特有のこういうデザインを編みたい、といった明確な目的はない。「シャトルを使ってレースを編みたい」というだけの動機なので、どっちでもいいのだ。

 いいのだが…………

 たとえばメキッキオヤに乗り換えたとして、タティングレースの本に載っているあるデザインを編みたいと思ったときに「メキッキオヤだとどう編めばいいか」を考えるのはなんだかめんどくさいな。
 このふたつは似ているとはいえ完全な互換性があるわけではなく、出来が似たものでも違う編み方をしたり、どちらかの方法でしか編めないものもあるという。変換が難しいものにうっかり挑んでしまう危険性は大いにあるので、ならば両方上達した方が話は早いのではないか。

 いや、話は早いって、……まあ、早いか。いや、早いかほんとに?



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