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編み図のむずかしさ

2024/07/31
 「引き返し編み」って、ちょっと半端な名称ではないかな?と思う。編み地の上の方でやるならこの名称で足りそうだが、編み始めの方では「段の途中で引き返して傾斜を作りつつ裾を編みつなぐやり方」とか、こうとでも書いてくれないと意味がわからんのだ……

 だって。
 カーブしたベストの裾を例にあげておいてこの編み図だと、「裾がぴろぴろしてるデザインか?」と誤解しそうになる。
 いやそんなはずはないと思い直しても、この図だとどう編めばそうなるのかわかんない。この基礎本では「編み進む引き返し編み」と丁寧に書いてくれているが(それでも意味がわからないのはわたしの程度の問題なので措くとして)、世間一般で使われているのはただの「引き返し編み」が圧倒的に多い。
 引き返すことによって取り残された裾はどうなる? いつ上の方と裾のぴろぴろをつなげるんだろうと疑問に思ってしまう。

 編み物においては、編み図だろうと英文パターンだろうと「編めばわかる」が当たり前で、かく云う自分も初めての靴下は編み図を理解するどころか、マルティナさんの本の懇切丁寧なプロセス写真と説明通りに編んだらできたわけだし、とりあえずやってみりゃなんとかなるのだと思う。

 なのに、文章だとよくわかんないので編み図を見てみよう、となったらますますわかんなくなったりする。今回のように。

 わからないときはまず基礎本。
 編み物に限らず、たいていのことはまずは基本的な本で解決方法を探す。
 うちには上記の雄鶏社のもののほか、文化出版局のものがあるのだが、なんで2冊あるんだろう。確か先に雄鶏社の方を買ったんじゃなかったかなあ……文化出版局のかぎ針の基礎本を持っていたから、棒針も同じシリーズが欲しいなと思った程度で買った気がする。
 もちろんわたしのレベルでは2冊の違いはわからない。ゴム編みの作り目のバリエーションの豊富さは同等なので、片方あれば済むかもしれない。

 ともあれ、そんな基礎本にあたって編み地のイラストを見たらイメージはできた(まあ、「編めばこうなるわけだな」と、やればわかるという地点に戻っただけ)。
 そういえば引き返し編みの動画を観たことがあったぞと思い出し、履歴をたどってこちらを観直した。

●【棒針】セーターの肩などを編むテクニック『編み残しの引き返し編み』3つの方法

 この人は昔から名前だけしか知らなくて(あと「ニットの貴公子」という肩書き)、わずかな情報から「かぎ針で美麗なものを編む人らしい」と認識していたが、昨年たまたまこのチャンネルを見つけて「どのへんが貴公子なんだろう」と悩み続けている。
 酒と演歌が好きで話がおもしろい普通のおっさん。でも貴公子?

 まあいいや。

 大変わかりやすく聞きやすい説明なうえに、基礎本には載っていないことまでわかった。折しも、これから編み始めようとしているパターンにかけ目がたくさん登場し、「かけ目って穴が開くらしいから(やったことはない)避けたい」と思っていたところなので、かけ目を使わない引き返し編みというのは非常に勉強になった。

 それで編んでみたサンプルがこれ。
 あおみどりの糸で一目ゴム編みを3段をまっすぐ編み、グレーの糸で引き返し編み。
 基本も試さずいきなり応用に着手してしまう自分はいかがなものかとは思う。だが、かけ目をせずとも素人目にはどこが変だかわからない程度の仕上がりになったぞ。
 マーカーにひっかかった目の向きをどうするのかは適当にやったけれど(メリヤスはぎの糸の通り方同様、こういう小さな部分でわたしはつまづく)、要するに編んでいてマーカーが右側に移動したら、マーカーの糸を引っ張って次の目と一緒に二目一度すりゃいいのねと自分なりに理解できたので、広瀬先生ありがとうである。

 そういえば、指でかける作り目がうまくできないのをどうしようと悩んでいたときに見つけた、共糸をかぎ針で編みつける作り目の動画もこの人のものだったな。
 「広瀬光治が教える編み物の基礎」みたいな本、出してくれないかなあ。