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編むことだけじゃない編み物本

 引き続き、編み物の本の話。

 70年代のニットというと「ゆるゆる、ゆったり」なイメージだった。おそらく60年代後半のヒッピーカルチャーとごっちゃになっていたんだろう。
 だが入手した2冊の本をざっと見た限りでは、そういうものはない。ゆとりがあっても全体的にすっきりした仕立てになっている。細身のデザインにしか興味のないわたしでも、このくらいならいいかなと感じられる。
 詳しいわけではないが、今時の流行に合ったものはほぼ載っていないのだろうなと思う。が、たとえばこんなものであれば今でも充分にかっこよさが通用するのでは?
 モデルの脇にある説明文を見てわかるように、この本は単に写真と編み方が載っているだけでなく、着こなし方や毛糸を選ぶヒントなども載っている(この「カラーでなくても色が伝わる感じ」もすごいよなあ)。編みたいものに適した毛糸や布地を選ぶ能力が圧倒的に欠落しているので、こういうヒントは大変参考になる。

 しかも「この本の作品の組み合わせ」が載っていて、たとえば以下の作品。
 この上着とベルトを別のページのワンピースと組み合わせたらこう。
 市販の服ではなく本の作品を組み合わせる、というのは当時は自分で編む人が多かったからなのだろうな、と思う。今であれば間違いなく市販の服との組み合わせが中心になるだろうし、手編みのものを合わせるとしてもせいぜい服と小物の組み合わせなんじゃないだろうか。まあ、そもそも「掲載している服同士の組み合わせ」ができるような作品が載っている本はあまりないかな……?

 ファッション専門誌が出てきたのは70年代だったはずだから、それ以前は編み物や洋裁の本がその役割を果たしていたのかもしれない。現に、こういうページもけっこうな分量で載っているのだ。
 写真は編むことに関しての指南だが、右側の「新しい着こなしのアドバイス」という項のような、組み合わせ方のヒントや小物の取り入れ方などもあり、今の編み物本とだいぶ様相が異なる(そもそもこのセクションの冒頭は「70年(※この本の出版は1970年3月)の流行を考える」だったりする)。
 きっとシーズンごとに新しい本がたくさん出版されて、その時その時の流行に合わせた作品と着こなし等のあれこれが載っていたのだろう。まるで雑誌だ。そういう意味では、『毛糸だま』ともだいぶ方向性が違うな。