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更なる疑問と雑な結論

 うしろ身頃は袖ぐりの手前までが終わったので、今度は前身頃。
 前身頃の上部のみをボタンで留めるヘンリーネック仕様なので、編み始める前からここで苦労するに違いないと思っていた部分。
 似たようなものが手持ちの本では見つからず、基礎本にも『セーターの編み方ハンドブック』にも載っていないので、頼りにできるのは載っている詳細編み図のみ。

 が、毎度お馴染みの「これだけじゃわからん」という事態に。
 問題の部分の図を書き写してみたが、書き足せるようなこともない。52目めまでは普通に模様編みをして、その次で左増し目をする、ということしかわからない。

 その通りにやればいいのだろうが、問題は53目めの伏せ目。
 54〜56目めはボタンで留める部分(前立て)になるので、前身頃はここから「1〜53目め」と「57目〜109目め」に分かれる。だから54〜56目めは伏せ目をするのはわかるし、その両脇にも1目ずつ伏せ目の指示がある理由はわからないけれど、52・58目めでそれぞれ1目ずつ増し目をするので、結果的に中央の3目分があくというものわかる。
 わかるのだが、53目めの伏せ目はいつやるの?というのがわからない。増し目をしたら、左の棒針にかかっている53目を編んで、増し目をかぶせればいいのか?

 そもそもこの編み図、57目のあたりに「糸をつける」という指示があるようなのだ。「ようなのだ」というのは、「糸をつける」と印字された脇にそれっぽい線があるのだが、矢印の先が56目めと57目の間の線に重なってしまい、矢印がよく見えない。
 襟ぐりであれば、53目めのところに「糸をつける」という指示が入るのが普通なんだと思う。でも編み図通りにやるならば、左増し目のあと53〜56目めを伏せていって……え、そんじゃ中央3目あける部分の伏せ目のあと次の段どこからどうすんだよ、と思った。

 もしかして向かって右側の前立ても続けて編むのか?と混乱したが、簡易編み図ではきちんと中央はあけるように描かれているし、この図ではボタン穴の指示がないのでそもそもデザインと相違する。
 (この図は同じ模様編みをするベストと重ねて描かれているのだ。ページ数のためといえど、こういう載せ方って無駄にわかりにくくするだけでは)

 編み図への不満はともあれ、いくら初心者でも56目まで伏せたら次の段が妙なことになるのはわかる。まさか53目めまで糸を渡らせるはずもないだろうし、うん、糸をつける指示は無視しよう。調べてもわからないので無視するしかない。
 問題の53目めの伏せ目も、段の終わりで1目だけ伏せ目をするという編み方の例を見つけられなかったので、向かって左側を編むときにここから糸をつけて伏せればいいやと諦めの境地でケリをつけた。

 でも諦めても疑問は尽きない。
 52目めを普通に編んで、その次で左増し目、という理解は合っていると思う。だがすぐ下の段はすべて表編みで、増し目をする段は模様編みセクションなので裏目なのだ(すぐ上に載せた画像では下の段は裏目になっているが、これは裾から同じ模様編みをするベストの編み図と重ねて描かれているせい)。
 基礎本を見ると、この記号のすぐ下に短い線がある場合は「裏目の増し目」の指示だという。でも図では短い線がない記号なので、「表目の増し目」だ。確かに基礎本の「表目の増し目」の図を見れば、すぐ下の段の表目のどこの糸を引っ張ってくるのかわかる。

 ……ってことは、基礎本の図に従って糸を引っぱり上げて、それで模様通りの裏目を編めばいいのか?

 ここまで考えたらもう限界だった。
 意味のわかんない場所に糸をつけろと書いてある時点でだいぶ気が滅入って、段の終わりで1目だけ伏せ目ってアリなのか判断する情報も見つけられず、まるで出来の悪すぎるフローチャートを雑然とした手順書の内容に沿って修正するという今やっている仕事みたいだ。「なんでここで手順に書いてない作業がフローに出てくるんだよ」とか「ここまで登場しない書類が急に出てくる手順なんなんだよ」とか、わけのわからない代物をどうにか論理的にまとめあげなければならない作業に酷似していてうんざりだ。

 だからもう自分で適当にやるしかない。きちんと調べる気力はもうない。結局、模様は裏目だが表目の増し目そのまんまの編み方をした。どうせ前立てを編む際に拾って隠れる部分だし(すごく雑)。

 毎度こんな有り様なら、ほんと、自分で製図できた方が悩まずに済むよなと思う。いや、編み方がわからないと物理的に不可能な製図をしてしまう危険性もあるので、どのみち既成の編み図で編むことは必要か。
 せめて製図をきちんと学べば、「こういう場合はこう」というセオリーがわかるのかな。それならあれこれ編んで悩むという泥臭い下積みも少しは減らせるだろうか。

 来年は、佐倉編物研究所の製図講座うけようかなあ……