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ボタン待ち

 勘で適当に袖つけをしていたわけだが、さすがに下準備はちゃんとした。
 肩のてっぺんと脇の下の中央を留めて(重要なところなのでクリップを2個使う)、それぞれの半分、更にその半分、という具合。引き抜きを進めていってクリップが邪魔になったら外して、かぎ針をさしている部分と次のクリップの中間に外したばかりのクリップを留める。
 もしクリップが50個くらいあれば、ぜんぶ使って留めていたかもしれない。そのくらい、適当にやるからには「適当にやれる」環境を整えておきたいわけだ。

 そういえば介護職として働いていたとき、職場に「他人に仕事を押し付けてさぼってばかり」という評判の先輩がいた。わたしはそう感じることが一度もなかったので、まあ、鈍感だったのかもしれない。
 が、ある仕事を任されたときに「これとこれをやればいいから」と要点をおさえた指示をもらい、ひどく感心させられた。
 あの先輩がさぼっているように思われていたのは、やることに無駄がなくて手早く仕事を終えていたせいもあったんじゃないだろうか、と今でも思う。親戚が危篤という理由で休んだ日にスマホゲームはログイン状態だったらしいけど。

 なんだっけ……

 何もかもを適当にやっているわけではなくて、要点はおさえている。つもり。

 ところで「1目内側にかぎ針を入れる」というのは地道にやった。かぎ針編みで目の頭をすくうように編むのと似たような感じでやってみたのだが、袖と身頃を重ねていっぺんに、というのはさすがに無理だったからだ。
 これは編み地によってやりやすさが変わるのだろうか。セーターとノースリーブのときは、と思い出してみようとするも、必死でやっていたせいなのか何も覚えていない。経験を活かす以前の問題だった。

 ともあれ、あとはボタンをつけるだけ、というところまでできた。
 いや、あとはボタンつけと糸始末。
 グラニースクエアの糸始末は楽しくてしょうがないのに、ちょっとこっちはめんどくさそうだ。万が一おかしなことになった場合に備え、糸端をまったく始末せずに編んできた。それをこれから全部どうにかしなきゃならないという……
 ウール100%の場合は糸端を掌でごりごり撚り合わせてつなぐのだが、コットン糸はそれができないのでこうなってしまうわけか。面倒だな。

 でもしょうがない。やるしかない。
 っていうか、無事に今週中に完成するんだからそのくらいいいじゃないか。