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父の反応・自分の反応

 誕生日や父の日などをまったく意識しない子供から手編みのプルオーバーを贈られたらどうなるか。
 我が家は記念日だのプレゼントだのを重視しない環境なので、逆に云うと、なんでもないときに何かを贈っても「何事か」と驚かれることはない。たまたま見つけたから、という感じでちょっとしたものを買ってくることが時折あるので、「特定の日だから贈り物をする」というのはない。

 それでも、やっぱり急にこれはな……というのはあった。手編みって。そんなことする柄じゃないのに。好き勝手に生きて本ばかり読んで転職を繰り返すような子供だし。

 なので「こういうの着ますかね……」みたいなことを云って(なんだその物云いは、という感じだが、どう切り出せばよいかわからなかったのだ)プルオーバーを見せられたときの父親の反応は、「なんだろうな」くらいだった。
 が、そこで母が「あなたが編んだの?」と口をはさみ、編んでみたかったから編んだんだけど、と云ったら父はかなり驚いたようだ。
 「よかったわねー、娘に編んでもらって」とかなんとか母がいろいろ云ってくれて、父もしみじみ「ありがとう」と云ってくれて、まあ、無事に受け取ってもらえた。

 というか。

 父がどんな表情をしていたのか、実は見ていなかった。目はそっちを向いていたはずなのだが視覚が働かなくて、何も見えていなかった。

 いや、慣れないことすると動揺するもんだな、ほんとに……