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袋を吊るせ

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 編む予定の毛糸を作品ごとに袋に入れて吊るせばいいんじゃないか、

 とアホなことを思いついてしまった。
 なんといっても、あれこれ編むとなると置き場がない。惜しげもなく恥を晒してしまうと現在の手芸用テーブルはこんな状態。
 テーブル、っていうかテーブルとその周辺だな……いろいろ床置き。ちなみに影にはソックヤーンを詰めた紙袋2号がひとつ。そう、2号。つまり1号もあって入りきらないから2号なのである。

 今でこそ手前の一角がやや空いているが、半袖プルオーバーを編んでいる間はここも埋まっていた。編み図を置いたり、編み方をノートにまとめたり、と手芸一切に関わることをやるはずのテーブルなのに、編み図は床に置いて見るし、編み方は畳に寝ころんで書く始末。編み図を解読するときに限り、……隣の部屋の机に向かってやっている。
 最初はここまでひどくなかった。でも去年の12月にはこの1歩くらい手前な状態だったので、テーブルを用意してから大した時間もかからずにこうなったことになる。編み針を入れる瓶と同じで、増殖に時間がかからない質なのだ。

 散らかし自慢・だらしない自慢になってきたが、とにかくこんな状態なので編みかけが増えても既に置き場がない。さすがにこれ以上、床にあれこれ散らかすのはいやである。間違いなくいつか踏むから。整理整頓ができないことを恥じる以前に、踏むべきでないものを踏んでしまうのがいやだ。

 それであとは吊るすしかないじゃないか、と思い至ったわけだ。もっと狭い部屋に住んでいたときに「天井にも本棚が置ければいいのに」と重力すら無視して考えてしまったので、行き詰まると空間をどうにか利用する発想に向かう傾向があるらしい。
 でもあながち間違いでもないだろう。収納術といって必ず幾種類もの活用法が登場する突っ張り棒が示しているように、床より上の何もない空間は格好の収納場所なのだ。たぶん。

 ならばどう吊るすか。毛糸の中心に紐を通して数珠繋ぎにし、紐を結んで輪にして引っかければ簡単な気がする。でも編みかけはそれでは収納できない。であれば袋に入れるのが早道で、レジ袋はさすがにちょっとと思うので紙袋か。でも紙袋は上が空いているのでほこりが溜まる。じゃあ口をしぼれる巾着袋だな。
 どうせなら必要な毛糸をぜんぶ入れられる大きさがいいんじゃないか。着るものだとそれなりの大きさが必要になるので、裁縫の練習がてら縫ってみるか。

 入ればいいんである。洒落たステッチなどせずに並縫いでOKだ。

 が、まっすぐ縫うことができないんだよなそういえば……縫う線を布に書いても曲がる。もちろんミシンなど持っていない。
 ……いやいやいや、「まっすぐ縫えない自分」という思い込むのがいけない。ここは開き直って、縫い物なんてぜんぜん難しくないんだと思い込むことにしなければ。

 そんなわけで、相変わらずの「編むまでが大変」という事態である。どうにかならないものかと思うけれど、まあ、「縫い物楽勝」という思い込みでどうにかできれば差し引きゼロだ。ものは考えよう。結局、めんどくせえと思うか、いい機会と思うかの違いでしかない。