前々回の転居のときにお気に入りの急須と湯呑みが行方不明になって久しい。以来、10年以上も急須と湯呑みなしで茶を飲んでいる。つまり、マグカップでティーバッグの茶を飲んでいるというわけだ。
出かけた先でちょいちょい探してみるものの、どうも気に入ったものを見つけられないできた。10年以上も見つからないというのはこだわりがあるわけではなくて、単に「これだ」と思えるものに出会えないという運の悪さによる。大さじ・小さじを買うのに半年以上かかったというのも同じで、こだわりはないのに気に入るものに出会えず時間がかかってしまっただけだ。
そんな不運な状況だったが、実家にしまい込まれていた急須をもらってきたのが今年のはじめの話。見た瞬間に「あ、これ欲しい」と思ったのだが、自分がそういう急須を欲しいと思ったことが意外でもあった。というのも、やかんを小さくしたような金属製の急須など見たことがなかったので想像したことすらなく、ゆえに自分が探していたものがこういうものだとは予想もしていなかったのだ。
どのへんが決定打になったのか、未だにわからないでいる。わからないが、気に入っている。こだわりがないけどなんでもいいわけではなくて、いざ気に入ったものは考えたこともないようなものということは、何がしかのこだわりや嗜好があるのだろうか。
お気に入りで謎だらけの急須だが、難点と呼べそうなことがひとつある。それは、金属製だということだ。
正確には、金属製であること自体に不満はまったくない。ただ、湯を入れると急須全体が熱くなるのだ。だからそのまま木製のテーブルに置くのは抵抗があり、布巾を敷くなどして対処していたが、自分の雑っぷりが布巾というかたちで如実に現れているのは心地よいものではない。
どうにかしたいと思ったけれど、こんな単純なことをどうにかできないでいた。
それを打開したのがドイリーである。
レース編みのドイリーを24枚も編んでおきながら使い道のなさをさんざん書いてきたが(そして使い道がないけれど楽しいからいいのだと開き直ってきたが)、こいつを急須の下に敷けばいいんだ!と当たり前すぎることにやっと思い至った。なんだか、ドイリーに使い道がないのではなく、自分がドイリーに使い道を与えていなかっただけではないのかと思えてくる。
ともあれ、それで編んだのがこれだ。
またもや笠石あきさんのデザインである。今回もまた立体感もりもりだが、中心に近い部分に急須を置いても支障がなさそうだったのと、そう難しいように思えなかったので編むことにした。

Free Pattern / 5月のドイリー1|笠石あき--かぎ針編み・レース編みの編み図
5月16日は私の誕生日! Happy Birthday to me! ということで、5月に編んだミニドイリーの編み図を公開します。 詳細 使用針:レース針2号(1.5mm) 使用糸: (白・青)オリムパス エミーグランデ (50g / 218m) (紫)ダイソー レース糸ソリッド #20太(20g / 80m) 使用量:10-15g / 45-65m 大きさ:約16cm 使う編み方: 引き抜き編み、鎖編み、細編み、細編み2目一度、長編み、裏引き上げ細編み、引き上げ長編み、引き上げ長々編み、鎖編み3目のピコット、鎖編み7目のピコット
糸はいつものダルマの20番とエミーグランデである。ということは次は金票40番で編むことになるのだが、それはとりあえず措いて、急須のためにさっくり編んでしまおう……とした。
いや、なんかもうコレ中心に近いところ(シルバーの円の内側、メッシュ状に見える部分)で引き上げ編みがあっちこっちに行ってやたら難しくて。
ちょっと急須の下に敷くものが欲しかっただけなのに、なんでこんな難しいやつを選んでしまったのか。編み図は理解できるのに実際に編むと位置を見失い、ほどいては編み直し、というのを何回かやる有り様。しかも最終的に目数がおかしいところは適当にごまかし、拾う位置が怪しくなった部分があちこちに。
選択を誤ったというのは明らかなのに、別のデザインを探すことなど考えずに編み図と編み地にかじりついた。この根気、なぜもっと必要な場面で発揮できないのか。
四苦八苦しながら完成させた。いちばん難儀したところは予想外の厚みが出たので結果的に良い選択だった。難しかったけど。お手本とはだいぶ様子が違うけど。
「ちょっと急須に敷くもの編むか」くらいの気持ちで編んだらこんなに苦心する羽目になるとは。ドイリーをたくさん編んだけれどまだまだだ。
でも当初の目的である急須の敷物としては充分だろう。使うものなので、ダルマの20番で編んだドイリーに初めてピン打ちをした。乾いても金票40番のものほどぱりっとしないのは、糸が太いせいだろうか。
ともあれ、これで布巾を敷かずに済むわけで、嬉々として急須の下に敷いてみた。
これは…… 思っていたより大きかった。そしてシンプルな急須が無駄にゴージャスに見える。洒落たティーポットの方が似合いそうだ。そもそも縁飾りまで編まなくても事足りたような気もする。 ドイリーを編むのが楽しいことに変わりはない(えらく難儀したけど楽しかった)が、実用品として編むなら適切な色とデザインを選ばなければだな。もしこれが和風な急須だとしたらますます不似合いだ。
……適切なデザインなんて選べるだろうか。自分のセンスが不安だ。
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