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糸がない

 なんたることか。
 息抜きに編んでいたドイリーの糸がもうない。11段目まで終わっているが、まだあと4段もあるのに。

 次の段は途中で糸を替えるのが少し面倒な模様なので、ここで糸を切り、次の段は新しい糸で始めれば済む話である。もし次の段が途中で糸を替えても支障がない模様であれば、ぎりぎりまで編んでいって途中で新しい糸に替えればよい。

 その肝心の新しい糸がないのだ。

 だから愕然としている。

 金票40番ははるか昔になんとなく使い道もないのに買ったものがずっと放置されていて、レース編みのドイリーに興味を持ってはじめて使い始めた。小さなドイリーをまずダルマの20番で編み、次いで同じものを金票40番で編み、といういわば練習用だったのだが、気がつけばそれなりに気に入っていた。
 だから放置していた金票40番がなくなりそうなとき、同じ色を買い足した。
懲りずに金票40番を買い足す | ハチドリの記

懲りずに金票40番を買い足す | ハチドリの記

 練習と称したドイリーを編むために使っている糸は、かなり昔になんとなく買ったものや、何かを買ったついでについてきたもの。つまり、これといった使い道がなくて持て余しているレース糸で練習用ドイリーを編んでいる。  ただ、必死で編んでいるうちに慣れてくるのかなんなのか、なく...

 ふたつ買ったんである。
 ふたつ買ったのに、なんでレース糸をまとめて入れている箱にないんだろう。

 確かにドイリーを編むためにいつも使っていた。が、10g玉であってもドイリー自体が小さいので下手すると2gも使わないのでそんなに減るはずがない。余裕でもう1玉残っているはずなのに。
 どこかに紛れ込んでいるのか、と怪しいところを探してみたがやはりない。どうしようもなくなってRavelryで糸消費の状況を調べてみたら……確かに、買い足した2玉のうち1玉は既に使い終えていて、いま編んでいるドイリーは残りの1玉で編んでいるようだ。糸在庫の管理は地味に面倒なのでもうやめようと考えていたが、意外なところで役に立った。そういや確かにドイリーたくさん編んでたな。はは。

 手元にもうこの糸がないのは事実。ならば買ってこなければ。

 まあ、オリムパスのレース糸、ましてや金票40番なんて定番中の定番である。毛糸を扱っている手芸屋であればだいたい置いているだろう。うちからいちばん近い手芸売り場にもある。あるのだが、この色はない。だってそもそも売り場に出ているレース糸は10g玉が20個もないし。しかも半分以上はエミーグランデだし。大玉なんて白しかないし。

 どこにでもあるはずの金票40番なのに、近隣の手芸店はどこもレース糸の扱いが申し訳程度だ。レースといえば白が定番というのは今も昔もそう変わりないだろうから、白があって他の色が少ないのはしょうがないのかもしれない。ましてや色数が非常に多いのだから、ピンポイントで求める色がないのは諦めるしかない。

 ならばレース糸をどどんと取り揃えている店に行けばいい。それが道理だ。しかし、どこだそれ。刺繍糸が2メーカー分(オリムパスとDMC)ずらりと揃っている店は見たことがあるが、レース糸がそんなパラダイス状態の店など知らない。
 楽器ならお茶の水、ビーズなら浅草橋、古墳なら明日香村、というのはわかるが編み物に関してはそういうことすら知らないのだと改めて思う。

 いずれはこの無知をどうにかすることにして、ひとまず頼るべきはネット通販である。足でモノを探さずに済んでしまうがために、ますます実店舗を探す機会がなくなってんだよな。

 で、まずはレース糸の購入でよく利用する店で調べる。いつもは10g玉で買っていたが、金票40番の消費量もそれなりだと痛感したのでもう50g玉で買おう。が、50g玉は白のみの取り扱いだった。10g玉であれば求める色はあるのだが、単価と送料を併せて考えるとどうかな……店を限定せずに商品で検索してみると、どこも送料無料ラインがそれなりで判断が難しい。
 どのみち、金票40番の50g玉をひとつ買うだけでは送料がかかる。その送料に納得できるかどうかなのだが、今回はどうせだから送料無料ラインが比較的低めのところでついでに気になっている糸も買ってしまうか。

 などと逡巡しているうちに、「なんで送料無料にこだわってしまうのか」と疑問に思った。

 厳密に云うと、自分の場合は「送料がかかってもいいや」と思うことは普通にある。
 たとえばある店でしか扱っていないものを買う場合、店までの交通費が往復1,000円くらいかかるなら、ネット通販を利用して送料600円かかる方が安く済むのでそれでいいやと納得する。もしその店がネット通販を行っていなければ2,000円の交通費に納得して買いに出かけるし、どちらにも納得できなければ、それはそこまでして欲しいものではなかったということだ。
 複数のネットショップで扱っているものにしても、商品価格と送料を考慮して選ぶのはいつでも同じだが、送料無料ラインを目指すかどうかは状況によって異なる。たとえば目的のもの以外に扱っている商品が興味のないものであれば、不要なものを買って送料無料を目指すわけがない。

 編み物関連のネットショップで怖いのがここで、目的のもの以外にもそれなりに関心があるから「ついでにあれも買ってみよう」となりやすいのだ。
 なので編み物に限らず、自分の関心のあるものを専門的に扱っているネットショップでは「送料無料のために今それを買う必要があるか」ということを考える。けっこう厳しく自分に問うてみる。目移りした相手が限定品だと欲望との戦いになる。3割引もやばい。半額はもっとやばい。処分特価はもう大変。

 でもそもそも送料は無料ではない。当たり前だ。梱包資材を作るのも、注文した商品を箱に詰めて配達伝票を印刷するのも、それを集荷して配達するのも、すべて人の手によるのだ。機械で自動化できている部分にしたって、その機械をつくるのも稼働中に管理するのもメンテナンスするのも人である。そして労働には必ず対価が発生する。
 それを思うと、「商品代金のほかに送料がかかるのが当たり前」と考えて生きていく方が自然なのではないか(明らかに送料を上乗せした商品価格で送料無料を謳うケースもあるが、これはまとめて買えば買うほど利益が増える構造なので、そういう店では買いたくない)。

 といっても、送料負担を苦にせず小分けに何度も買うとそれだけ発送に関わる人的負担も増えるわけで、これはこれで気分がよろしくない。要するに、何度も配達させるのは嫌だというだけの話である。もし自分が発送する側だったらめんどくさくて嫌だ。

 そんなわけで……さてどうしよう。
 買い物をするならいっぺんで済ませたい。これだと全体的な負担は減る。かといって3年先に使うものまでまとめて買っておく必要はないので、やはりここは当面必要なものを厳選して買うのがよかろう。その結果送料が発生するか否かは気にせず、「いま使うもの」……と、ちょっと使ってみたいもの、を、買うか……ダルマの80番レース糸が5g390円……高いか安いかわかんないけど390円くらいならいいやと思えてしまうこの危険度の高さといったらもうね。



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