袋は順調に編み進めている。前回投稿したとおり、そもそもの部分で派手に間抜けをやらかしたので、たぶん袋はこのまま問題なく完成するだろう。
これまでを振り返ってみると、何かを編むときはたいてい何かしら問題が生じる。編み図の意味がわからないとか、襟のゴム編みを間違えるとか、ゴム編みの作り目を7回やり直すとか。最初から最後まで何も起きないというケースはとても少ない。
それで今回の袋編みの袋はというと。
前述の通り間抜けな出来事は既に起きた。
でも実はもうひとつ、毎度お馴染みの「編み始めるまでが大変」という事態も起きていた。
なんで編むのはさほど難しくないのに編み始めるまでが難しいというか大変なのか。いつもだよ。半袖プルオーバーの模様編みは編むのも大変だったが、編み図の掲載雑誌の編集部がどういうつもりで説明を書いているのかを推測しなければならなかったのだから、それにくらべれば大したことじゃなかった。
今回もまた本に腹を立てるというかなんというか、キレると脳内で半透明のもやのような敵にジャーマンスープレックスをお見舞いしていた。
編み物を始めてからというもの、なんだこれは畜生と思うと必ず脳内でこういうことが起きる。なんでジャーマンスープレックスなんだろう。飛び技が好きなんだけどな。
それで、今回の脳内ジャーマンスープレックスをかました理由をつらつらと書く。
まず、意気揚々と作り方を見てみたら、作り目の部分でいきなり壁に衝突した。スタート位置に立とうとしたらまさにその位置にでかい穴が掘ってあったみたいなもんである。
内容は「糸を指にかける作り目」なのだが、2種類の図解があり1と2という番号が振ってある。1番目の方法は見慣れない動かし方で、2番目の方法は一般的な作り目と同じ動きをするようだ。
問題は、1番目の方法は作り目のスタート方法の図説で、2番目の方法はその次の方法の説明で、そんでその次どうすんのかがわからない。また1番目の方法に戻るのか、以降は2番目の方法で行うのか。図の余白にも作り方説明にもどこにもそれが書かれていない。どっちだよ!と久し振りにキレた。ここで最初のジャーマンスープレックスである。
どこにも書いていないなら他の部分に何かヒントがないか探すしかない。編み物はすべからく推測すべしという格言でもほざきたくなってきた。
カラーページの方には編み方のポイント解説(作り目の解説ではない)が写真入りで載っているので、そちらをじっくり読んでみた。
どうやら表編みとすべり目を交互に繰り返して編んでいくようだ。作り目は偶数なので、編み地を裏返したときは表側ですべり目をした目を表編み、表編みをした目をすべり目をすることになる。その結果、裏と表で編み方が互い違いになるので二重の編み地になるのだろう。
構造がよくわからないが、経過と結果を考えあわせるとたぶんこんな感じの理屈に違いない。よくわからないけれど、たぶん。
で……それでどうした。それで作り目は結局どうすればいいんだ。
再び作り方ページの図を眺めてみる。すると、なんだこれ、作り目が横幅じゃなくて輪になっている。
早くもジャーマンスープレックス2回目。いや、袋になるんだから結果的にそうなるのはわかるが、そんじゃ作り目は2本の棒針でどう作れというのか。もういっぺんジャーマンスープレックス。作り目部分は袋の底になるんじゃないのか? ならば「72目作り目」という指示だが、実際に棒針にかかる作り目は36目になるのか? 棒針にかかるのは1本あたり36目になるだろ、袋の手前側の面の分が36目、向こう側の面も36目なんだから。それとも1本あたり36目つくって端をつなげっていうのか。並行に並んだ棒針でどう操作すんだよ。
袋の片面の幅の目数はどこにも明記されていない。ゲージもない。追い討ちをかけるようにまたもやジャーマンスープレックス。棒針2本でどう輪に作り目しろってんだクソ。
眉間のしわをのばしつつ、広瀬先生が説明してないかな、と期待して検索するも見つからない。だが以下の動画が参考になった。
●棒針応用編(2) 袋編み
なるほど、1目ゴム編みの作り目から始まるのか。ということは、1・2の次が書かれていない図解に頼らずシンカーループを拾う作り目すればいいんじゃね。まあ1と2を交互にやって作り目をするのだろうが、イライラしながらそんなことやらなくても36目でメリヤス3段編んでシンカーループ拾って72目にすりゃいい。
動画ではすべり目は糸を手前にしている(=浮き目)が、本では最後に袋をひっくり返す編み方なので、編んでいる間は裏編みが外側になる。となると、本の方法がやりやすそうだ。動画の方法は、手袋の指のような外表で編むものについて有効なのだろうな。
というわけで、無事に「たぶんこう」程度のやり方を導き出して、しくじった。
別糸とメリヤス3段とシンカーループ拾いでは、そりゃ当然、底はくっついて表目が外に出るよな。でも今回は裏が外に出るような編み方をして最後にひっくり返すんだぞ。ここだけ表目になってるの変だろ。この方法で作り目するなら本体も表目が外に出る編み方しないとだよ。 ……まあどうせ内側に隠れるからいいや。今更もういい。こんくらいなんだ。気にしないぞ。気にするものか。
というオチはともあれ、動画に助けられるまでに何度かジャーマンスープレックスをやらかす羽目になった。一応「確かこのへんで」というところに明記したが、体感としてはこの4倍くらいあった。実際にこれだけやったら相手が病院送りになるだろう。いやその前にレフェリーストップ。
要するに、整理して書いたのでこの程度になったものの、実際は正解を見つけるために思考が右往左往しては腹を立てる、ということを延々と続けていたのだ。体力がないのにそういう根気だけはあるらしい。血管と神経が心配だが。
たかが編み物本にここまで腹を立てられるというのはもはや芸だろうか。でも新聞を読んでもいちいち腹を立てているので(あれこれ呪いたくなる出来事に困らない世の中だし)、諦めず耐え忍ばずというのはただの性格だろう。芸ですらない。どうすんだこの性格。どうしようもないか。まあいいや。
海外パターンの存在を知ってから、世の中には「テストニッター」と呼ばれる人がいると知った。パターンが他人にも編める内容になっているか、目的のものが完成させられる内容になっているか、といったことをテストする役割を担っているという。
どうやら日本の編み物本にもそういった人たちが関わっていると聴いたことがあるが、果たしてこの本のテストニッターとはどんな人なのだろうと思う。この程度の説明で編めるというのなら、けっこうな経験者ということか。これきれいだから編んでみたい、と本を手に取る初心者の目線は徹底的に無視されているわけか。
ほんと、必要な用具が棒針2本で作り目が輪の状態ってどういう書き方だよ。そんなんじゃ初心者わかんねえよ。どっかに「これは初心者には難しい内容だ」とわかりやすく書いといてくれよと思う。
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kolibri
片仮名の編み物技法はプロレス技っぽいですよね。自分で書いてて「なんかこういう技法あったよな」と思いました(←ジャーマンツイステッドキャストオンと混同)。
編み物本の言葉の足りなさは、何十年も前の「わからなければ手芸屋さんや編み物教室で教えてもらう」という選択肢に不自由しなかった時代のまま今に至っているのでは……と思います。
でも出版社は「わかりやすい説明」ではなく「簡単な編み方」が編み物人口を増やすと勘違いしているような気もしたり。できない人の心理がわからない(自分ができない人だったときのことを忘れている)まま初心者にものを教えてもなんにも通じないよ、と云いたくなってきます。
あんこ
kolibriさんの脳内ジャーマンスープレックス、よ~~っく分かります。
私、初めて肩下がりのある往復編みのベストを編んだのですが、肩下がりの編み方が簡易編み図では当然わからず、詳細な編み図もありましたが、その編み図を見ても、実際にどう編んでいいのか分からず、はぁ~っ?と何度もキレながら、何度も何度もほどいて、ようやく前後身頃の肩の目数が同じになって、できました。
独学で、日本式の編み図本だけで編める人ってどんな人?って思いました。
そういえば、最初、「ジャーマンスープレックス」の単語を見た時、たしかプロレスの技だった気がするけど、編み物の技法か?と思い、なんだなんだ?と読んだら、やっぱりプロレスの技で安心しました( ´艸`)