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うさぎ3号を編む

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 とりあえず胴体のみ欠損したバラバラ殺人状態までは編めた。胴体以外の部分しかないというと、悪魔か化け物かわからないがそういうものの食卓に載っている様が頭に浮かぶ。でもどうせ食べるなら腹のあたりを輪切りにして厚いステーキにするんじゃないかなどと下らない方向に思考が滑っていきそうになるが、いやでも内臓をを取ったらそんなに食べる部分がないかなとか、……ともあれ、細かいところはひととおり編んだ。3/0号でちまちまと。
 あとは胴体。頭から尻まで一体型で、ただし手足やら何やらの位置に目印をつけながら編んでいかなければならないので、続けて編めばいいだけなのに微妙に手間がかかる。いや、目印があればあとが楽なのは理解しているのだけれど、目印の数がやたらと多いのがなんとも。
 あみぐるみは基本的に「だいたいこのへん」という感覚頼みで組み上げていくのが常なのだが、このうさぎに限っては完成写真そのままの姿が気に入っているので指示通りに組まなければ気が済まない。
 それで編んだ過去の1号と2号はこんな出来で、
 要するに、指示に従っても難しいのである。ついでに云うと綿の詰め加減も難しい。1号は比較的いい感じにいったが、2号は「あまり詰めすぎるのもな」と変に意識しすぎた結果、やや痩せ気味になってしまった。とりわけ腹の出具合が難しい。
 あと、足の角度がどうもよくわからない。1号はまっすぐ、2号は敢えて内股にしたが、キットの完成写真はやや開き気味のように見える。
 さてこの角度はどうすればいい感じに出せるか……まっすくでも内股でもそれなりに気に入っているので今回もそのどちらかでいくか、お手本に合わせてみるか。かぎ針編みの難しさがわからない自分だが、思い通りの姿に組み上げる点については本当に難しいと思う。

 難しいといえば、こっちもだ。
 細い毛糸を15号の棒針で編むやつ。
 編んだらフサフサの編み地になった毛糸の方はまだいいとして(編み目がわからないから)、金と黒のキラキラの糸の方が大いに納得がいかない。
 そもそも糸自体が滑りやすいので、棒針の上のみならず手に持っていても安定しない。ロープでも締めるときのように掌にぐるっと巻いて引っ張りたいくらいだ。
 きつめに編んでも糸が糸だし棒針は太すぎるしでバランスというものがこの編み地には存在しないような気さえしている。4本針だから安定しないのかとも思ったが、棒針の境目以外でもゆるみが生じているのでもはやそういう問題ではないだろう。輪針を買ってきてもたぶん解決しない。

 こうなると、いかにして編んだ糸を固定するか、である。ところかまわず目がゆるむというのは、次の目を編む瞬間に直前の目の糸が不安定になっているのだろう。それは糸と棒針(ちなみに重い)を支えることに気を取られていることも一因に違いない。次の目を編むのに四苦八苦しているから、編み終わったところにまで注意がいかないのだ。

 やや強めのテンションを保つような持ち方をしても、ノルウェー式でも糸を手に持つアメリカ式でもうまくできないのだから、糸のかけ方を工夫するしかないような気がしている。

 まず和裁で布地を張る用具のようなものが思いついたが、編み物をするうえでは糸は一定の張り具合を保ちながら送られることが必須だ。ずるずる滑るこの糸に抵抗を与えるにはどうすればよいか。

 それで次に思いついたのが軍手。掌側にゴムが貼ってある力仕事用である。ただしこれは指の長さに合わせて買ったものなので、指まわりも掌まわりも余裕がありすぎる。手の大きさは男性並みなのに厚さは女性並みというバランスの悪い手なのだ。力仕事にはこのくらいでもまあなんとかなるが、編み物ではなかなか邪魔になりそうだ。
 ならばニットの手袋だ。今のところ、数年前に雑貨屋で買ったこれがいちばんましで、指の長さがまだ少し足りていないが仕方がない。ニットなので指や掌のまわりはぴったりなので、操作性は悪くないだろう。

 軍手もニットの手袋も、糸をかけて引いてみたがそれなりに抵抗があって滑らない。ただし、実際に編み始めたらどうなるかは明日以降なんとか時間を見つけて試してみなければ。左手だけでよいのか、右手も手袋をはめるべきなのかも確かめる必要がある。

 現時点ではっきりしているのはただひとつ。
 編み針と毛糸のサイズがアンバランスすぎるものなど、いま編んでいるものが終わったら二度と編みたくない。