編集

揃わない編み目

 手芸キットについてしみじみ考えて、よし、安易な買い物はやめよう、と決心したが実はその半日前くらいには「内藤商事のペルシア風ブランケットのキット欲しいな」などと思っていた。けっこう前から存在は気になっていたが、いつの間にか値上がりしていたので焦ったというのもある。
 使っている毛糸がエブリデイソリッドなので、毛糸を揃えて真似て編むか、と思ったけれどすぐ諦めた。無理だこれ。複雑でわけがわからん。というか、ブランケットもいいけどキリムも気になる。初心者セット……いや、まずは手持ちのものでやってみて更に続けてみたいかを確認してから、とも思うが……

 こうやって書くと手芸が趣味のすべてのように見える。しかしもちろんそんなことはなく、ここ数日は気乗りがしない。靴下の編み直しも、なんだかリズムに乗りきれないというか、しっくりこない。編めているけれどあまり楽しくない。
 目の大きさは以前よりも引き締まった感じで、やはり一度目は編む手がゆるかったのだろう。おかげでミニ輪針では編みにくい。ということは、もしかして履き口がきつくなるのでは。以前はどのくらいだったか覚えていないが、ここまで編みにくかっただろうか。覚えていない。

 編みにくければ楽しさも半減する。だが、ちまちまとした編み目が整列している様を眺めるのは悪い気分ではない。「揃っている」というのは基本的に心地よい。そこに乱れを追加したくなる本能はどうしようもないが、最近は仕事で不合理・不整合・支離滅裂その他もろもろが入り交じった代物を扱わなければならないので、逆に編み目くらいびしっと揃ってくれという気持ちが非常に強い。
 といっても相変わらず編み目はふらふらしがち。果たして毛糸の伸縮性はどこまで信頼できるものなのか?というか、「ちょっとゆるいな」と「きついかも」が入り交じるとどこでバランスがとれるのだろう。

 基本的につながった1本の毛糸なので、どこかがきつかったりゆるかったりしても、あちこちで引っ張られるうちにきつい部分はゆるみ、ゆるい部分は引き締められて、最終的に全体のバランスがとれそうな気がする。
 だがたとえば1段60目の場合で、3段目のきつい目と、55段目のゆるい目は、果たして全体の伸長で調和がとれるのだろうか。遠すぎて無理じゃね、とちょっと思う。

 ではどうすれば解決できるかと考えて、昨年のアドベント靴下の謎を思い出した。
 編み込み模様は「目立たせたい色の毛糸を下、地の色は上」で編む、というのが基本だが、わたしはどっちが上でも下でも変わらないことがわかった。奇跡的というか悲劇的というか。
 未だに原因がわからないけれど、「編んだら編み地を上下左右に引っ張る」という行動が何がしかの作用をもたらしたのでは、と考えている。その頻度は1段どころか、5本針の1本分を編んだら、くらいだったように思う。
 アルネ&カルロスの動画で編み地を引っ張っていたのでなんとなく真似してみただけなのだが、やってみたら全体がならされるような錯覚を抱き、癖になった(編み込み模様の場合のみ)。

 もしこの推測が当たっていれば、せめて1段編み終えたときに編み地を引っ張ることで、編み目のばらつきは多少は解消されるのではないか。されるといいなあ! 他に解決方法が思いつかないのでここらへんで手を打ちたい。って、こういう発想が誤った結論に到達しやすい下地をつくるんだよな……。


 編み物の気分じゃないときは他の趣味に取り組むか、そうでなければ考え事。ひたすら意味のないことを延々と深く考えている。たまにこうやって編み物のことを考えることもあるのだが、たいてい妙なところに行き着く。
 どうせなら安定して編める方法を考えろと思うのだが、どうしても小学生の謎の自由研究レベルにおかしな発想になる。考えるだけ無駄ということか。