靴下を編んでいたら妙なものが出てきたことがある。
かかとのうしろ側を編み終えたその姿は、どう見てもアランジアロンゾのわるもの。
かかとのわるもの、はどうかと思ったので「かかとの妖精」と名づけた。といっても「これからかかとの妖精を編むぞ」などと考えるわけではない。このわるもののような姿が目に入ったら「かかとの妖精だ」と思うだけである。毎回これを見るたびに「わるものみたいだな」と思うよりはマシかと思って名前をつけたわけで、なんというか、気分の問題。
それだけ。
なのだが。
わたしは通常、靴下は右足と左足を交互に編む。最初のうちは律義に1段ずつ交互に編んでいて、そのうち10段ずつとか20段ずつになった。
ただし、かかととマチは別である。手持ちの棒針の事情もあるが、なんとなく「かかとのうしろ側・かかとの底・マチ」を一気に編むのが癖になっていた。なのでこの3点セットは片方ずつ。そのあと甲と足裏はまた10段なり20段なりを交互に編み、つま先からはまた片方ずつ。
が、今回の編み直しではかかとを補強タイプ(表側は、表目とすべり目を交互に編む)に変更したので、3点セットをばらして左右交互に編むことにした。久し振りの編み方なので、左右できつさが変わってしまうのではという不安があったからだ。
そしたら、かかとのうしろ側と底を編み終えたら変なのが出てきたという。
左右いずれも謎の虫みたいなやつが。なんだこれ。何をどうしたらこんなのが出てくるのだ。 自分で編んだものにしばし呆然とし、もはや妖精どころではなくただの虫という事実を写真におさめてから急いでマチを編んだ。かごにきれいに入れたら虫が出たショックはけっこう大きい。適当に袋に突っ込んでおくのが正解なのか。
いつもはちんたら編んでいるのが嘘のように休まず編み進め、これから甲と足裏を編むぞという段階へ。
そしたらまた。
角度を変えて見てみると、歩き出しそうな気配。ふたり連れで歩いている人の写真で、顔の角度がこういう感じのを見かけたような気がする。
しばらく眺めていたら、首から上をヒジャブ、身体にはブルカをまとったアラブのおねえさんに見えてきた(根拠の怪しい連想……)。虫がいなくなったらアラブのおねえさん。わたしの想像力が幼児レベルで豊かすぎるのか、仕事で疲れすぎて変なテンションになっているのか。
幼児といえば。子供のころに手袋を結んでひっくり返して人形みたいなやつをたまに作ったが、靴下でも何かそういう遊びができるんじゃないだろうか。編みかけでこうなんだから。
さすがに自分のやっていることが正気じゃないぞと思えてきたので、最後にふとした思いつきをかたちにしておしまいにしよう。
ブレイクダンス。
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