決して暇なわけではなく、自分なりに優先順位をつけているつもりだ。今年のはじめくらいまでは編み物がわりと優先されがちで、しかし最近はようやくそうでもなくなってきた。飽きたわけではなく、他のものについて関心が高まってきたために優先度が下がってきたという。
その「他のもの」の筆頭にあるのがクロスステッチ。裁縫が苦手で苦手でしょうがないくせにこれだけは昔から好きで、なんといっても針を刺す位置が明確なのがいい。いくらでも変なところに間違って刺すことのできる裁縫とは大違いである。
裏面をどれだけきれいにできるかという難しさがあるが、「表がきれいであればいい」と割り切ることもできる。もちろん、裏を極限まできれいに仕上げるという道もある。このようにして自分に課す難易度を自由に調整できる面でも気に入っている。
それでも、ずっと刺していられるわけでもないし、軽く絶望することもある。
確か去年着手したやつ。 いやもしかして一昨年か?と血の気が引いて調べたら、去年の3月だった。安堵したが、よく考えれば1年以上放置である。安堵もくそもない。よくここまで放ったらかしにしていたもんだ。
改めて16カウントの生地を眺めてみると、細かすぎて早くもやる気が失せそうになった。けれども細かいとはいえコースターになる程度の小さなものである。いやほんと細かくていやになるが、升目に沿ってざくざく刺していけばそれで済む。しかも位置がずれないよう図案を確認しながら刺すのは往路だけで、復路は生地だけを見ていればいいのである。途中で糸が足りなくなっても裏の適当なところに通すだけだし、何も難しいことはない。
それなのに、なんで放り出したんだろう。
思い出した。図案を確認しにくかったんだ。
今回の図案を刺すにあたって、どういうわけか「薄い色から刺していこう」と考えた。コースターの縁取りを除けば使うのはクリーム色・ピンク・黒の3色で、クリーム色から刺すことにしたのだ。それがまずかった。
最初に載せた写真で見てわかる通り、クリーム色ではない部分は目を飛ばしている。これがまずいのだ。
云うまでもなく、飛ばす部分では針を刺さずに目数を数え、次にクリーム色が始まる部分からまた刺すことになる。まず図案で飛ばす部分の目数を数え、それから布地で目数を数えなければならない。この「図案の内側の一部を飛ばす」というのが面倒なのである。
クリーム色部分の外側の端のカーブは一段ごとに数目ずつ増えていて、クリーム色のみの段では「どこからどこまで何目」と数える必要はない。「下の段の端から外側に何目のところから始めて、何目はみ出すところで終わる」で済む。内側の一部で飛ばしている段でも、外側の始まりや終わりは下の段と対照させて考えるだけでいい。
なのに、内側に飛ばす部分があるといちいち目数を数えなければならないのである。たとえ始まりが「下の段の端から何目」であっても、そこから飛ばすところまでが何目なのかを確認して、数えながら刺さなければならない。しかもそれをこの細かい布地でやるのである。
もちろん、クロスステッチにおいて目数を数える場面は普通にある。「クリーム色が何目、その次は黒が何目」という具合に。
今回の場合においてまずかったのは、「クリーム色だけ先に刺す」という発想だった。何も刺さない場所を数えるよりは、別の色で刺した部分を数える方が断然やりやすいのだ。刺した部分が目印になってくれるので、「クリーム色は、下の段の黒の何目手前まで」という認識がしやすくなる。
なお、複数色を並行して刺す場合に針が複数必要になるかというと、必ずしもそうではない。たとえば最初はクリーム色で刺していき、黒になるところでいったん針に通す糸を替え(外したクリーム色は布地の裏側に垂らしておく)、黒の部分だけ複数段を刺していき、きりのいいところでまたクリーム色に替える。こうすると、クリーム色の部分は外側の刺し始め(または終わり)だけ確認すれば、黒で刺した部分の隣まで刺せば済むのである。
そういった利点を考えずにクリーム色だけで刺していたがために、根気が続かなかったというわけだ。
いったいなぜ薄い色から先に刺そうと考えたのか……絵の具じゃなくて糸なんだから、色が混じるわけでもないし。
1年も放置してしまった原因がわかったので、合間をみて刺していくとしよう。これが終わらないと他のものが刺せないのである。いや、刺してもいいんだけれど寝覚めが悪い。かといって編み物のように複数を並行できる気がしない。
いや、編み物だろうとなんだろうと、あれこれ並行するのは根本的に向いていないような気がするな。
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