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袖の拾い目を考える

 襟はあまり粘らずに済ませてしまったが、袖ぐりはそうはいかなかった。
 襟と違って伏せ目が少ないので、目や段から拾う数が多い。袖ぐりの段数もそれなりなので、これはもう均等に分けて拾っていかなければまずいぞと考えた。

 必ずやるべきことを「2目以上の伏せ目と、肩はぎのすぐ下の段は拾う」と解釈しているので、それ以外に拾うべき目数と、それを拾う範囲(段数)をもとにして計算した。
 計算方法は、裾のゴム編み後にたった2目だけ増やすために勉強した分散増し目の方法……ではなく、そのときについでに学んだ分散減目の方法を使った。増し目と減目どちらの方法を応用すべきか迷ったが、「4目編んだら1目減らす」を「4目拾ったら1目とばす」に置き換えればいいだろうと判断。
 (まあ結局、拾う場所がよくわからなくて適当に当たりをつけながらやってしまったが……)

 云うまでもなく、この方法というか考え方が適切なのかなんてわからない。均等に拾うためには分散なんちゃらの理屈を応用すればいいんじゃねと思ったからやってみただけである。なので非常に胡散臭い。そもそもが「袖の拾い目ってどうやるんだろう」としばらく考えてしまうようなレベルなのだ。
 襟と同じようにできるとすぐに気づけないあたりが初心者の……いや、袖の拾い目のセオリーってのもあるのかなもしかして。たったいま気がついた。まあいいや。すでに片方おわったしな。
 袖ぐりなので、2目ゴム編み止めは遠慮なく糸を引いた。襟は適度なゆるさがどの程度かわからず苦労したが、袖ぐりなど狭くていいのである。身頃に多少のゆとりがあるのだから、袖ぐりまでゆるかったらただのサイズが合わない服じゃないか。
 と、1枚で着るつもりもないのに難癖をつけてしまうのは、袖ぐりのゆとりに対して絶え間ない不満を感じ続ける人生だったからである。こだわりってめんどくせえな。

 むしろ、こだわるべきは拾い目をした部分がごろつかないかという点ではないか、と思う。
 どのくらいの幅であればごろつかないのか、なんてことはわからない。見た目に違和感がなければいいような気がするな、と思ったけれど、こうやって見てみても正直よくわからんな。違和感以前の問題だ。
 なので着て判断。
 うん、着てもよくわからん。これはもう完成したやつを丸一日着てみないと判断できそうもないな。少なくとも、着ただけでなんだこれというレベルの違和感はないので、まあまあ悪くない出来なんじゃないだろうか。自分にしては。
 他方、袖ぐりは満足だ。ここまでぴったりになるとは驚きだ。ゴム編みを足したら一気に狭くなり、それでいて締めつけ感はなし。ということは、脇の下がだぶつかない袖はこのゴム編みの直径を目安にすればいいんだな?などと製図もできないのに思う。

 残念なことに、袖ぐりがぴったりしたことで身頃のゆとりが気になり始めた。最初に着てみた時点で「ちょっと余りすぎてないか」とうっすら感じていたのだが、もっと気になってきた。
 前後の身頃の両端を減らすと袖ぐりも調整しなきゃなんないから、身頃の中心部分で目数を減らせばいいだろうか。いや、でもそれだと襟の直径が小さくなるな。それはどうしよう。もうちょっと襟を開けてそれで調整すれば大丈夫かな。って、どちらにせよカーブの調整ってのが必要なのか。難しそうだ。どうしたものか。

 早々に輪針その他を調達したというのに、いつになったらもう一枚に着手できるのか。先は長い。


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