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肝心なところが満たされない

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 珍しいことに、今週も「すてきにハンドメイド」を観た。
 また佐倉編物研究所の伊藤さんが登場したわけではなくて、編み物とは別の話。
 キリム。

 キリムと聞いて、そういえばむかし買ったキリムの本があったよなと著者名を見てみたら、まさにテレビに出るのはその人。まあ、日本でキリムというのはそんなに有名というわけでもないだろうから、こういうことが起きるのは当たり前か。
 この本を読んだらものすごくやってみたくなったのだが、雑な自分にはちょっと、いやけっこうハードルが高いような気がした。縦糸をきちんと張る時点でもう雑な仕上がりになりそうな気がする。「まあこんなもんでいいか」の蓄積でとんでもない仕上がりになる未来が鮮やかに目に浮かぶ。
 と、そんなこともあってただ眺めるだけで終わっていたけれど、眺めるだけでも充分に楽しい。というか、色のセンスが怪しい自分が織るより他人の素晴らしいセンスにうっとりしている方が世界は平和になるだろう。「なんだこれ」と自分の作品に愕然としてわざわざ暗い気持ちになるよりずっとましだ。

 が。
 放送された番組を観たら、「間違っても歪んでもそれでOK」という意味の言葉が。それどころか、むしろ完璧じゃなくていいとか。

 背中を押されるどころかドロップキックをかまされたような気分だった。

 ……まずはすてきにハンドメイドのテキストに載っている小さな作品を織ってみるか。
 そのうち入門キットを買いそうな気がする。

 ところでキリムはトルコの織物なのだが、特にトルコに関心はない。のだが、どうもこういう独特な色使いや模様に惹かれる傾向があるらしく、たまにペルシャ絨毯の展示即売会などを見かけるとつい見てしまう。でも買えないから遠目で見る。
 いや、さして大きくないのに10万とか、すごくよくわかるんだそれは。むしろ10万で売っていいのかと思ったりする。そのくらい手間がかかるんだろうなと思う。でもひょいと買ってしまえるほど裕福なわけではないし、では思い切って1枚だけとなると、じっくりすぎるほどじっくり迷うに決まっている。それほど広くないスペースに並んだもののなかから選ぶだけでは足りない気がしてしまう。いっそ中東に行くかとかトチ狂ったことまで思う。

 それにわたしはこういう類いのものがいろいろ好きで、1枚だけ絨毯を買うとなったらどこのものを買うのかでまず迷う。中東といっても広いし、中央アジアもあるし、南米だって惹かれるし、モロッコとかもなかなかだし、と、好きなものが多すぎて果てしなく迷う。10LDKの豪邸に住めば解決するがそんなところに住む金はない。あと掃除が大変。

 そんなわけで、2DKの賃貸マンションに住むわたしは本で楽しむことになる。しかもなぜか手芸本。美術書はそれなりの金額なので、これまたおいそれと買えないのだ。まだ手芸本の方が手頃なので、たとえばこんなの。
 いつこれが写真集から実用書に転じてくれるのかは不明だが、眺めるだけで十二分に楽しい。不満はない。
 ちなみに、日本の文様だってわりと好きだ。
 もちろん実物の方がいいのだが、あの文様を刺繍した煙草ケースいいよな……などと妄想するだけでこれまた楽しい。実物の素晴らしさを知っていれば、クロスステッチに置き換えたものはしょぼいと感じることはまあ、ある。あるが、まあ、それっぽいものが手元にあるとなんかちょっと満足するというか。
 ただ、日本のものについては色が褪せているのが良かったりするんだよな。こういうのは、もともと鮮やかな色使いでないからこそ起こる現象なのだろうか。

 こうやって手芸本であれこれ堪能しているわけだが、ひとつだけ不満があるとすれば、南米をテーマとした手芸本が見つからないことだ。

 いろいろな模様を好んでいるわけだが、ふと南米のドキュメンタリーなどでたとえばペルーのどこかの市場が映ると、色とりどりの服やブランケットから目が離せなくなる。行き交うペルー人が身に着けている服や小物までじっくり眺めてしまう。
 他の地域はそこまでではないのに、南米だと何もかも見ようとしてしまうので、よほど好きなんだろう。が、肝心の南米の模様を堪能できる手芸本がない。アヤクーチョ刺繍の本が出版されているが、ちょっと違うのだ。それももちろんいいけどちょっと違う。そこじゃなくてもっと他のやつ。

 しょうがないから、南米雑貨の店でも探してそこに行って堪能するか……以前は近場のイトーヨーカドーにチチカカという南米雑貨の店があったのだが、どれを買おうか目移りしまくっているうちに閉店してしまった。手元に小物がひとつふたつ……いや、みっつよっつあるだけである。
 思い切って何か敷物を買えばよかった。確か他のどこかにもチチカカはあるはずなので、探そう。

 いや、まずは靴下を仕上げなければだな。
 またもや仕事に追いまくられているので、あとちょっとなのに終わらない。
 うんうん。確かに夜のイメージだなこれは。